先日、伊東潤さんの『江戸を造った男』を読みました。
絶賛伊東潤さんにどハマり中でして、いま色々な本を読み漁っております。
その中でも、この小説はグッと来て心に残っています。もちろん、他の本も心に残っていますが、この小説は経営にも通じるからかもしれません。
江戸時代初期の河村瑞賢の物語なのですが、次々と出てくる難題をクリアしていく様は感動します。
普通だったら「もう無理でしょ」「そんなのできないよ」と思うところを、「どうしたらできるか?」を考えて実行していく努力の天才です。
この小説の私なりのオススメポイントをまとめてみました。
1.商人の物語だけど人としてどうあるべきか?がわかる小説
商売に関する話が、さまざま出てきますが、この小説を通して感じることは「人としてどうあるべきか?」を考えさせられることです。
徳川四代将軍家綱の後見役である保科正之と対面する場面で、こんな一節があります。
(保科正之)「そなたには日陰を歩いてもらうことになるやもしれぬが、それでもよいか」
(河村瑞賢)「望むところです」
何気ない一節かもしれませんが、ここに河村瑞賢の生き方が出ていると感じました。
2.マーケティング視点がすごい
人としてどうあるべきか?が根幹にありながら、さらにマーケティング視点も持っています。
河村瑞賢があるとき、捨てられた瓜や茄子が流れてきたのをみて「これでなにかできないか?」と考え、それを漬物にして売るシーンがあります。
- 食べやすいように小さく刻んで売る(他の漬物屋さんはまとめて売る)
- ライバルがいないところで売る(場所の差別化)
- 疲弊している人が多い作業現場で売る(塩気がほしくなる)
- 紀州の漬物として売る(「紀州のおこうこはいらんかね」)
- 試し食いをさせる(マーケティングでいう無料オファー)
…と、さまざまな工夫をした上で、販売して拡大していきます。
このような視点を持っているのは、人を見る目があるからではないかと思いました。
ただ売りたいというよりも、人を見て「どういう人ならほしくなるのか?」という幹の部分を考えています。
3.人の心を掴むのがうまい
先程の人を見ているに通じますが、人の心を掴むことが非常にうまいなぁと思いました。
どういう接し方をすれば心が掴めるのかを心得ている感じがします。
用水路の開削で百姓たちを説得するときにも。平身低頭でお願いをする場面があります。
ある程度偉くもなっているので上から命令するような感じで接するのが普通だと思います。(特にこの時代)
しかし、河村瑞賢は平身低頭お願いして、藩の危機を訴えることからはじめます。
つまり、危機感を共有した上で、一緒にがんばっていこうというメッセージを伝えているのです。
ただ「こうしなさい」「これをやりなさい」だけだと、反発心も生まれます。
でも、「こういう状態になっている」「だから力を貸してほしい」となると、「それなら…」と気持ちが動きます。
そうです。気持ちを動かす天才なのです。
そして、伊東潤さんの小説の書き方がわかりやすくて、「この後どうなるんだろう?」とどんどんのめりこんでいきます。
…
実は他にもグッと来るポイントがたくさんあるのですが、長くなるのでこの辺にしたいと思います。
あとはぜひ読んでみてください。
特に、経営者の方にオススメです。